お子さまの成長支援
療育
ゆっくりとは言え、生きている限り発達は進んでいます。
課題と共存しながら伸びようとする過程を支援するかかわりを「療育」といいいます。
療育には2つのねらいがあります。
「お子さまが生活しやすくするためにはどのようにしたらいいかを考え教えていくこと」
「お子さまの個性・持ち味を生かしながら、今持っている力を出し切って自己充足させることにより人としての豊かな感情や自発性を養うこと」
療育を効果的に進めるために私たちはお子さまの特性を正確に理解し、
1. 役割体験
さまざまな状況の中で自分がどのような役割を担っていくか
2. 生活体験
さまざまな生活領域の中での活動や生活内容・方法の確立そして広がりをどのように作っていくか
3. 関係体験
さまざまな人やモノや状況にどのようにかかわりその関係を発展させていくか
以上をともに体験することにより、日々の療育を効果的に進めることに取り組んでいます。
支援のアプローチ
人として根幹となるスキルは、大きく分けて、注意集中や記憶力などの認知スキル、感情のコントロールや時間等による「やるべきこと・やりたいこと」の調整などの自己コントロールスキル、コミュニケーションや社会性などの対人スキルの3つがあります。
お子さまの状態に応じて、個別指導の中での練習がよいのか、集団生活の中における個別の学習の練習でも取り組めるのか、集団活動の中で実践的に学ぶことがよいのかは変わってきます。
お子さまによっては個別指導も選択いただく場合もありますが、社会生活では集団生活が基本となるため、集団生活の中での訓練に重きを置いています。
教室で用意した個別・集団の活動や学校の宿題など、さまざまな活動を通して、認知スキル・自己コントロールスキル・対人スキルの向上へのアプローチを行っています。
個別支援計画
児童発達支援事業・放課後等デイサービスは、法に基づくサービスであり、『個別支援計画』の作成が義務付けられています。
個別支援計画とは、お子さま一人ひとりに合わせて、支援の方針を記載したものです。
保護者さまのニーズ・お子さまの興味関心・指導員によるアセスメントを統合し、お子さまがどのようなスキルを身につけていくことが必要なのか、今優先的にアプローチすべきことは何なのかなどを見極め、方針を定めます。
半年後の達成目標、1年後の達成目標と目標を設定し、半年ごとにどの程度、達成できているかを確認していきます。
療育サポートチーム
さまざまな職種のスタッフで療育サポートチームを構成しています。多職種の知識・療育に携わってきたさまざまな経験を踏まえて、チームで各教室の療育の質の向上を行うべき取り組みを行っています。
成長支援例
小学校3年生
診断名
自閉症スペクトラム障がい、AD/HD
本人の興味・関心
電車が好きで、電車の名前はたくさん覚えている。漢字への関心も高い。
本人の特性(見立て)
- 漢字の学習に対しては、とても集中して取り組ことができ、難しい漢字まで覚えている。
- 漢字以外の学習に対しては、集中が持続せずに、常に周囲の人に話しかけている。
- 負けへの耐性が弱く、ゲームで負けそうになると、自分に有利になるようにルールを勝手に変えようとする。
- ゲームなどで自分の思い通りにならないと、物を投げたり壁を叩いたりするなど物にあたることで怒りを表現する。
保護者さまの希望
- 漢字以外も万遍なく、学習してほしい。
- 感情のコントロールをできるようになってほしい。
支援方法
●個別課題
- 漢字の学習とその他の学習を、利用時には毎回用意。
- どちらの学習から行うか、順番を本児に決めてもらう。
- 壁側を向き、見える刺激が減る環境を整える。
- タイマーを用いて、鳴るまでは同じ内容の学習を進める。
●集団活動
- 勝敗のあるゲームを行うときは、最初にルールを確認する。
- イライラした気持ちになったときには、部屋の隅に移動して、クッションを叩くことに置き換えられるように促す。
- 気持ちが落ち着いてきたら、スタッフと1対1で本児の気持ちを引き出すように話をする時間を設ける。
- 本児が言葉にした気持ちを受容し、その場面でどう伝えたらよかったかを一緒に考えていく。
経過
●個別課題
- 最初は、漢字以外の学習に対しては、タイマーの時間が気を散らす要因となって「あと何分?」と頻繁に聞いてきていた。
- また、漢字の学習はタイマーが鳴っても「もっとやる!」と切り替えが難しいこともあった。
- 最初は漢字の学習を、その他の学習よりも長い時間で設定していたが、少しずつ漢字以外の学習の時間を伸ばすことができ、最近は同じ時間設定で取り組むことができるようになってきている。
●集団活動
- 最初はイライラしたときに部屋の隅への移動を促しても、対応しているスタッフを叩いて、移動することは難しいことが多かった。
- 一度、気持ちが落ち着いてから、本児の気持ちを聞き、特定の場所への移動とクッションを叩くことへの置き換えを伝えていると、少しずつ移行することができるようになった。
- 最近では、ゲームで負けそうになってきたら表情は固まりながらも「負けても怒らない」と自分に言い聞かせる姿が見られるようになってきた。
中学校2年生
診断名
知的障がい、自閉症スペクトラム障がい
本人の興味・関心
You Tube で動画を見ることが好き。
本人の特性(見立て)
- 発語はあるが、限られた単語で、簡単な要求を伝える程度。
- 急な予定変更は苦手で、変更があるとしばらく固まって動かなくなることがある。
- 送迎車に一緒に乗るスタッフ、友達への関心が強く、頻繁にスタッフに確認を行う。
- ひらがなの文字としての読みはできるが、文章として理解することは難しい。
保護者さまの希望
- パソコンで動画を見るだけでなく、入力もできるようになってほしい。
- 将来に向けて、自立して取り組めることを増やしてほしい。
支援方法
●個別課題
- ひらがなは読めるが、ローマ字は難しいため、かな入力でタイピングの練習を行う。
- 送迎車の同乗者への関心が高いため、同乗者の名前を入力する。
- 最初は、キーボードの配置でひらがなのみを書いた紙を用意し、その中から入力したい文字を探してから、パソコンのキーボードと照らし合わせて入力するように促す。
●集団活動
- 掃除や洗濯物たたみの活動を取り入れながら、掃除機の掛け方や洋服のたたみ方などの練習を行う。
- さまざまな活動を行った対価として報酬を得て、自由時間に使いたい道具を借りる際に稼いだお金から支払うという仕組みを教室全体で作り、お金を稼ぐこと・お金を貯めて欲しいものを得ることへの理解を深めていく。
経過
●個別課題
- 最初は、入力したい文字を探すことに時間がかかっていたが、少しずつ探す時間が短くなってきた。
- 最初の頃は、スタッフが一人付いて、入力する文字を一文字ずつ伝えるなど補助を行っていたが、入力する内容をひらがなで書いた紙を準備しておくと、ゆっくりながらも一人で入力することができるようになってきている。
●集団活動
- 掃除機の掛け方は、椅子を動かして何もないスペースを作る、掃除機の動かす向き、壁側の角の掛け方など具体的なやり方を伝えることで、教室内は上手にかけることができるようになってきた。
- 洋服のたたみ方は、長袖や前開きの服はまだ難しさがあるが、半袖のT シャツでは自分で整えてたたむことができるようになった。
- お金の細かい計算は難しいが、仕事をした対価でお金をもらって、欲しいものを手に入れるということに対しては楽しさを感じているようである。
- 少し大きい金額(500円玉など)を出して、お釣を受け取ることを、引き続き練習を行っている。
年中
診断名
ダウン症
本人の興味・関心
人と関わることが好き。
本人の特性(見立て)
- 言語発達の遅れ(本児からの表出は単語。かつ、「ママ」「ジュース」など本児が好きなものに限定される。)
- 自分の気持ちをうまく言葉で伝えられないため、思い通りにならないと泣いたり床に寝転んだりして表現する。
- 同年代の子どもよりも、大人との関わりを求める。
保護者さまの希望
- 要求などを言葉で伝えられるようになってほしい。
- 同年代の子どもと関われるようになってほしい。
支援方法
●個別課題
- 日常的によく触れるもの(果物、野菜、動物、生活用具など)に特化して、名称を答える課題を設定。
- 答えられないときには、指導員の言葉を真似するように促しながら練習する。
- おままごとなどの具体物、写真、イラストと、提示方法を変えていく。
●集団活動
- シャボン玉や紙吹きなどを通して、息を吸ったり吐いたりすることへの意識を高める。
- 動物の鳴き声あてクイズなどで、擬音を発生する練習を行う。
- お買い物ごっこを通して、物の名称を言う機会とともに、お店屋さんとお客さんの役割を決め、子ども同士の関わりの接点を作る。
●すべての活動を通して
- ほしいものに対して、指さしや「ちょうだい」のジェスチャーを行うように促す。
- 本児が興味を示したものに対して、スタッフから名称を伝えて、本児に模倣してもらう。
経過
- 最初は、さまざまな場面で物の名称を言わせられることに対して、少し拒否感をもつことがあった。
- 動物の鳴き真似、くすぐり遊びなど、さまざまな遊びを通して声を出す機会を増やしたことによって、自発的に声を出すことがとても増えた。
- 指さしや「ちょうだい」のジェスチャーを行う習慣をつけたことによって、思い通りにならなくて泣いたり床に寝転んだりするという回数は大幅に減った。
- ジェスチャーを通して、自分の要求が伝わる喜びや楽しさを知り、言葉で伝えようとする姿勢が見られるようになってきた。
- 発音が不明瞭なこともあるが、言葉数は増えてきた。
- 同年代の子どもとの関わりは、言葉がうまく伝わらないことが多いため、まだ積極的に関わることは難しいが、スタッフと一緒であれば遊びを共有したりオモチャを貸してあげたりすることができるようになってきた。
療育チーム 書籍を出版しました
●第一弾
スマートキッズ療育チームで執筆した書籍のご紹介です。
発達支援が必要な子どもたちのための放課後の居場所づくりから始まったスマートキッズプラスは、現在関東・大阪エリアを中心に41 の教室で、お子さま、そしてその保護者さまのために活動を続けています。
これまで、41 教室で多くのお子さまの支援を続ける中で得られた発達支援のノウハウ、そして発達障がいがあるお子さまのライフ・キャリア・スキル(よりよく生きるためのスキル)を開発していくうえで大切だと思われる考え方や取り組みについて取り上げました。また、保護者さまがどのように考え、どのようにサポートしていけばよいのかについても、そのポイントを解説していきます。
この本が保護者さま、学校の先生、療育機関で支援を行う方など、発達障がいがあるお子さまにかかわるみなさまの一助となればと思っています。
●第二弾
スマートキッズ療育チームで執筆した書籍第二弾のご紹介です。
第一弾の書籍では、発達障がいがある子どもたちがよりよく生きていくために大切な考え方についてでしたが、今回はさらに就労を含めた将来のより自立した生活を考えていくことをテーマに取り上げました。 10歳以降の子どもが「自分らしい」大人になるために、親としてどのように考え、どのようにサポートしていけばよいかなどについての「ヒント」が書かれた一冊です。
周囲のサポートを受けつつも、発達障がいがある子ども自身が「これがいい」と自己決定するための60の視点について解説しています。
本書は、将来の自立や就労について触れていることから、おもに10歳以上の子どもをもつ保護者さま向けに書かれています。もちろん、療育は早期から行うことが望ましいため、低学年の子どもをもつ保護者さまにも参考になると考えます。 「ヒント」を参考に、お子さまに合った段階の療育を、少しずつ取り入れていただければ幸いです。
●第三弾
早稲田大学教育・総合科学学術院 梅永雄二教授の監修のもと、「発達障害の子どもたちのためのお仕事図鑑」を発刊することになりました。
発達障害がある子どもたちが将来就労をするには、スキルの獲得はもちろん、子ども自身がどんなことに興味があるのかというニーズの把握が必須です。子どもたちがそのような「やってみたい」という思いを持つためには保護者のみなさまや周りの大人が、キャリアについて子どもたち自身が考えていくためのきっかけを与えたり、環境づくりをしていく必要があります。そして、子どもたちが無限に持つ夢や可能性を早いうちから広げて、子どもたちの個性を見極めながらサポートしていくことが大切です。
本書では、子どもたちの興味や関心に基づいた6つの職業分類と、48種類の職種についてわかりやすく載せました。また、子どもたち自身にも読んでいただきたいという思いから、巻末付録としてお仕事カードを付けました。ぜひご自宅で子どもたちと一緒に、将来はたらくことについて考えてみていただければ幸いです。
「発達障害の子どもたちのためのお仕事図鑑」をご覧いただいた皆さまよりたくさんの反響をいただいております!
- 子どもと一緒に読めたので、将来を考えるきっかけになりました。(保護者様)
- 図解が分かりやすく、やりたい仕事、合いそうな仕事が見つかりました。(保護者様)
- 自分たちもこんな仕事できるんだと思いました。(小学生)
- 一つ一つの職業に就くためのポイント、なるための資格等、職業の特徴等が簡潔に示されており、とてもわかりやすい。また、職業のタイプ分けやカード等、小学生でも教材として十分活用できると思います。(小学校教諭)
- 200を超える子どもたちの支援計画を策定しています。夢をかなえるため、夢を持つためにも「お仕事図鑑」は相談支援上重要です、大変参考になりました。(相談員)
連絡帳
保護者さまとは毎日の連絡帳のやりとりをさせていただきます。教室でのお子さまの様子をお伝えできるだけではなく、ご自宅でのお子さまの様子も私たちが把握することにより、教室での時間を実りある時間にすることが目的です。またお子さまの大切な成長記録としても残すことができます。ぜひ、ご不安なこと、ご相談などがあればなんなりとご相談ください。
おやこプラスについて
2016 年12 月より発達障がいのある子どもをもつ保護者に向けたペアトレ(ペアレントレーニング)ならびに発達障がいについての情報取得を目的とした情報サイト「おやこプラス」を開設しました。
発達障がいのある子どもをもつ保護者の子育てのサポートツールとしてスマートキッズのご利用者のみなさま、また一般の方々にもご利用いただけるようなコンテンツを提供しています。例えば、目の前で起こっている子どもの「好ましくない行動」にどう対応したらいいかわからないというときに簡単に情報が取得できるコラムを読める、もしくは地方にいて積極的にペアトレを学ぶことができなかったり療育支援を継続的に受けることが難しい保護者の方へも専門家が情報提供できる、など実際に目の前で療育支援を受けられないとき、保護者が誰にも相談できないときに、保護者の助けになるツールを目指し内容の充実を図ってまいります。
おやこプラスはこちらから